養育費を決める際には,「公正証書」を作成するべきと聞いたが,どういうことですか?

公正証書とは

公正証書とは,公証役場において,公証人(公証人法に規定されている公務員で,裁判官や検察官のOBが公証人になることが多い)が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書のことを指します。

公証人が作成する離婚に関する公正証書には,一般的に,離婚の合意,親権者と監護権者の定め,子供の養育費,子供との面会交流(面接交渉),離婚に伴う慰謝料の請求,離婚による財産分与,住所変更等の通知義務,清算条項,強制執行認諾等の各条項が記載されます。

離婚する際の手続き方法としては,協議離婚,調停離婚,審判離婚,和解離婚,裁判離婚といった方法がありますが,唯一裁判所を通さずに手続きできるのが,協議離婚になります。

裁判離婚であれば判決や和解調書,調停離婚であれば調停調書が家庭裁判所で作成されますが,夫婦双方が離婚に合意しており,条件等でも特に争いがない協議離婚の場合には,その協議内容を公正証書という公的な書面によって,約束しておくことができます。

また,公正証書の条項に強制執行受諾文言を入れておくと,債務者が金銭債務の支払を怠った場合,裁判所の判決等を得ずして,直ちに強制執行手続きに移ることができます。

養育費は,離婚後長期間にわたって支払いを続ける場合が多いです。養育費の取り決めを公正証書にしておけば,支払義務者が支払いを怠った場合,公正証書にもとづき,支払義務者の給与差押えをして養育費を回収することが可能になります。

しかし,公正証書を作成する場合,公証役場に対して、数万円の手数料が必要となり,弁護士を代理人としない場合,ご自身で公証役場にて相手方と顔を合わせることになるため,注意が必要です。

公正証書に記載される養育費関連

養育費に関する事項として、公正証書に記載される内容は、主に下記6つの項目です。
(1)月々の養育費の支払額
(2)養育費の開始時期・終了時期
(3)毎月の支払日
(4)支払方法
(5)取り決め後に事情が変更した場合の協議
物価の変動や当事者の再婚,失職,子の生活状況の変化,その他の事情変更が生じた場合や,子の進学による入学金・授業料・学用品代等,病気・事故による治療・入院等のため医療費等の負担が生じる場合に「別途協議する」などの条項
(6)強制執行受諾文言
公正証書に基づいて,直ちに強制執行することができるようにするための条項。養育費の支払義務に係る定期金債権については,その一部が不履行になった場合に,期限が到来していない将来の再建についても強制執行することができます。しかし,公正証書に債権の性質を明示する必要があります。例えこの条項が入っていたとしても,強制執行したいと意図した条項の内容や書き方によっては強制執行ができないこともありますので注意が必要です。

公正証書の作成について

離婚においては,親権,養育費,面会交流,財産分与,慰謝料,婚姻費用,年金分割など,検討しなければならないポイントがたくさんあります。

これらについて,適切な判断をするためには,離婚問題についての専門知識とノウハウが必要です。

離婚に際し,きちんとした合意を締結していなかったことが原因でさまざまなトラブルが発生する可能性があります。

きちんとした合意書を作成したつもりであっても,後日トラブルとなったとき、法的に適切な内容でなかった場合に、争いとなる可能性があります。

離婚協議において合意した内容もとに公正証書を作成するうえで,将来トラブルが発生しないよう,専門家のもとで,適切な内容の公正証書を作成することが重要です。

公正証書は効力が強いため,後から内容等で後悔することがないよう,離婚協議の際は,自分だけで判断するのではなく,合意内容についてまずは一度弁護士に相談することをお勧めいたします

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