不倫より元夫の暴力を重視し,元妻から元夫に対して1000万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,離婚に伴う慰謝料として1000万円という非常に高額な慰謝料を認めた事例です。この事例では,夫が不倫を繰り返していたのみならず,妻に対して深刻な暴力行為を繰り返していたことも重要な事情として挙げられており,それらすべての事情を考慮した上で慰謝料額を算定しています。慰謝料額には相場があることは確かですが,個別の事情によりその相場を大幅に上回ることがあるのも事実であり,この事例はそのことを端的に示す良い参考例といえます。不倫のみならず,様々な事情で慰謝料をご検討されている場合には,まずは一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

被告は、婚姻当初から、浮気が絶えず、原告は、被告の知人から、被告の不貞な行為を聞くなどするたびに、自身のどこに不満があるのかと思い悩むとともに、娘らの結婚に差し障りがないか、浮気相手の女性の家庭を破壊するのではないかと心配してきた。

また、被告は、気に入らないことがあれば、原告に対し、包丁を投げつけ、金づちや鉄棒で殴打し、足蹴にするなどの暴力を振るい、これにより、原告は、ろっ骨にひびが入ったり、指を骨折したりしたこともあった。
そのため、原被告の娘らが家庭裁判所へ相談に行き、原告も、離婚調停の申立てをしたが、被告が出頭せず、かえって今後の改心を約束するなどしたため、調停の申立てを取り下げたことがあった。

しかし、原告は、再び被告から暴力を受け、身の危険を感じて家を出たが、その際、娘らが既に独立していたこともあって、離婚を決意し、離婚等調停の申立てをした。
この調停において、被告が不倫や暴力を二度としないことを約束したため、離婚するまでには至らず、結局、夫婦関係を修復することになった。

その後しばらくの間、被告は、原告に暴力を振るわないでいたが、次第に、ささいな事で原告に暴力を振るい始め、平成13年3月、原告に対し、電気ストーブで体をめった打ちにし、そのコードで頸を絞めるなどの暴行を加えるなどしたため、原告は、離婚を決意し、家を出た。

慰謝料算定のポイント

本件離婚により、約50年間にわたる婚姻関係を解消し、今後の生活を送らなければならない原告の精神的苦痛は相当なものがあると推察されること、被告は、原告から、度々、不倫及び暴力をやめるよう申し入れられるとともに、2度にわたって家庭裁判所に離婚調停を申し立てられたことがあったのに、これらを受け入れなかったばかりか、直近の離婚等調停事件においても、原告に対し、今後暴力を振るったり不倫をしたりしないことを確約したにもかかわらず、これを無視し、電気ストーブで体をめった打ちにし、そのコードで頸を絞めるなどの暴行を加えた挙げ句、原告に傷害を負わせたもので、その行為の態様は極めて卑劣かつ悪質である上、事もあろうに、暴行の事実について身に覚えがないとして否認するなど、反省の態度が全くみられないこと、原告と被告間の婚姻関係が破たんするに至ったについては、原告において、落ち度といえるようなものは見当たらず、かえって原告は、長年にわたり、被告のたび重なる不倫や暴力に耐えながら、身を粉にして懸命に働き、2人の娘を養育監護してきたものであり、その苦労は察するに余りがあること、その他原告の年齢、婚姻期間等の本件に顕れた一切の事情を勘案すると、原告の精神的苦痛を慰謝するためには1000万円をもってするのが相当である

(※岡山地裁平成15年2月18日判決文より一部引用)

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