夫が妻の家事に不満をもち、女性に婚姻関係が破綻していると述べそれを鵜呑みにして不倫に至ったが,第一に責任を負うべきは夫であるとして妻から不倫相手への慰謝料を180万円と算定した事例

事例の紹介

この事例は,妻から不倫相手に対する慰謝料請求が問題となった事例であり,不倫の責任を一時的に負うべきであるのは配偶者であるとして,責任を負うべき夫が積極的に不倫に及んでいたことなども考慮し,慰謝料額が180万円とされた事例です。不倫の慰謝料において,一次的な責任を負うべきであるのは配偶者であることは,意外と知られていないことでもありますので,このようなことを対応していくことも大切です。不倫の慰謝料については一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは,平成15年12月24日に婚姻した夫婦である。
(4)原告は,生活費に余裕がなかったため,平成16年からパート勤務を始めたが,平成18年,Aが原告に渡す生活費を減額したことから,勤務先を変え,さらにパート勤務による収入を増やすようにした。
(3)Aが原告に渡す生活費は平成19年6月以降は月額10万円に減額された。そのころから,原告とAの会話は少なくなって,Aは,土日に出勤と称して外出したり,外泊したりするようになった。

(4)被告がAと不倫に及んだ時期は,平成19年7月ころと認められる。

(5)原告は,平成19年8月に,Aから,「別々に暮らした方がいいと思う」などと告げられ,それに対し,「悪いところは直す」旨を伝えた。
以降,Aは,「別れたい」などと述べつつも,その理由を具体的に説明することはなく,また,被告との交際については明らかにしなかった。
(6)Aは,平成19年12月,マンションを賃借し,同月末から平成20年1月始めにかけて被告と生活したほか,遅くとも同年2月ないし3月ころ以降,被告と同棲するようになって,現在に至っている。

慰謝料算定のポイント

被告は,被告がAと不倫に及んだ時期以前に原告とAの婚姻関係は既に破綻していたと主張しているが,経済的に余裕がなく,妻がパート勤務を始めて,お互いに忙しい中で夫婦間にすれ違いが生じ,会話が減るなどしたこと等から夫が不満をもつようになったという様子が窺われるにとどまり,ここから直ちに婚姻関係が破綻していると認められるものではない。
むしろ,原告が夫婦生活の維持に努めていること,少なくとも平成19年12月末ころまではAは生活費を原告に渡して共同生活を営んでいたことからすれば,原告とAの婚姻関係が実質的に破綻したのは平成19年12月末ころ以降と解するのが相当である。

被告は,自らも夫がいる身でありながら,また,Aが妻帯者であると認識しつつも,求められて,同人と肉体関係をもつようになり,婚姻関係は破綻していると言われて,その言葉を鵜呑みにして不倫を続けてきたものである。
そして,被告がAとの不倫を継続し,同棲するようになったことで,原告とAの婚姻関係は破綻するに至り,夫婦関係の修復は不可能となっていると認められるところ,被告は,今後もAと一緒に生活したいというのであって,このような経過に鑑みると,原告の受けた精神的な苦痛は大きいというべきである。
この点,Aが被告と不倫に及ぶについては,Aが原告との夫婦関係に不満を感じていたことが背景として窺われ,実際に,原告が家事等を完璧にこなしていたと認めることはできないけれども,このような状態は妻がパート勤務をして生活を支えている家庭ではある意味で致し方ないところであって,だからといって不満を感じる夫が不貞をしてよいわけはなく,本件でも,原告の帰責性を認めたり,被告の責任を軽減すべきものとは解されない
ただし,このような不倫の継続について第一に責任を負うべきなのは原告の配偶者でありながら積極的に被告に働きかけたAであり,被告の責任は副次的なものというべきであるから,以上の諸事情を勘案し,被告に対する本件訴訟では慰謝料として180万円を認めるのが相当である。

(※東京地裁平成21年1月19日判決文より一部引用)

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