かつて不倫関係にあった元妻と不倫相手が深夜の時間帯に面会していたこと自体を不法行為と認定し,80万円の慰謝料請求を認めた事例

認められる事実

(1) 原告とAは,平成18年12月22日,婚姻した。
(2) 被告は,平成17年7月頃,Aと知り合い,平成20年5月頃から同年12月頃まで,Aが原告と婚姻関係にあることを知りながら不貞行為を行った。
(3) 原告は,同年11月頃,被告とAが不倫関係にあることを知り,平成22年2月26日,被告が原告に対し慰謝料80万円を分割して支払う旨の慰謝料請求に関する契約公正証書を作成し,約定に従って支払を完了した。
(4) Aは,看護師として,平成23年6月23日から同年7月4日まで,石巻市に派遣されていたが,原告に対して,同月5日が帰宅予定日と偽り,同月4日夜から5日にかけて,埼玉県の温泉施設において被告と面会した。いわゆるスーパー銭湯であり,不貞行為を行えるような設備はなかった。
(5) Aは,同年8月17日ないし18日以降,自宅を出てさいたま市のbホテルに宿泊するようになった。
(6) Aは,同月19日午後8時20分頃,さいたま市において被告の運転する自動車に同乗し,会食するなどして被告と面会した。
(7) 原告とAは,平成24年1月28日,協議離婚の届出をした。

慰謝料算定のポイント

被告は,かつてAと不倫関係にあったものの,原告に対して慰謝料80万円の支払を約しており,再び原告とAの婚姻関係を破綻に至らせる行為をしないことを当然の前提としたものというべきである。

そして,深夜の時間帯にAと面会していた被告の行為は,被告がAと不倫関係を再開したのではないかとの疑いを抱かせるのに十分な行為であり,原告とAの婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為であると認められるから,原告に対する不法行為に該当すると認めるのが相当である。

原告が実家に戻り,離婚届をAに交付したのは同年9月であり,Aが被告と面会した時点において,原告とAの婚姻関係が完全に修復の見込みのない状態に立ち至っていたとまでは認められない。したがって,被告がAと面会したことは,原告に対する不法行為に該当するものというべきである。

以上によれば,被告は,Aとの面会について,不法行為に基づき,原告の被った損害を賠償すべき責任を負うところ,原告がAと約5年にわたって婚姻生活を営んでいたこと,

被告は,平成20年にAと不貞行為を行い,平成22年2月には,原告に対し慰謝料の支払を約束したものの,平成23年7月から同年8月にかけて,少なくとも2回,深夜の時間帯にAと面会していること,原告とAは被告との関係をめぐって口論となり,同年9月以降には,その婚姻関係が完全に修復の見込みのない状態に至っていること,

一方,被告は,被告と再会する前から原告との離婚を考え,思い悩んでいたAの窮状を見かね,同人の求めに応じてやむを得ず面会したものであり,必ずしもAとの面会に積極的であったわけではないことなど,

上記認定の一切の事情を考慮すると,被告の不法行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金員は80万円と認めるのが相当である。

(※東京地裁平成25年 4月19日判決文より一部引用)

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