夫婦の間で愛情が薄れていたこと,夫が積極的に不倫関係の構築を迫ったことを考慮して妻から不倫相手への慰謝料請求額を80万円と算定した事例
事例の紹介
この事例は,夫婦関係が相当に不仲になっていた状況で夫が不倫するに至った事例であり,不仲であったことを考慮した上で不倫の慰謝料が80万円とされた事例です。また,不倫相手の立場が受動的なものであったことや夫が積極的に不倫相手との再婚を望んでいたことも考慮されています。不倫が理由となって離婚する場合の相場は概ね200万円を下回ることは少ない中で,非常に低い金額となって事例といえます。慰謝料額が必ずしも相場通りではなく,個別の事案で様々であることを示す良い例であるといえます。慰謝料の金額については,まずは弁護士に相談されることをお勧めいたします。
認められる事実
(1)原告は,昭和63年8月31日にAと婚姻し,Aとの間に,平成2年に長女Bを,平成4に長男Cをもうけた。
(2)Aは,遅くとも平成12年頃から原告との性交渉をほとんど行っていなかった。
(3)Aは,平成17年頃に別の女性と肉体関係を持って交際し,これにより原告を憤慨させ,夫婦の関係が悪化した。
(4)被告は,独身の女性であり,平成20年2月頃から平成21年7月頃までの間,Aが妻帯者であることを知りながら,これと肉体関係を含む交際をしていた。
(5)被告は,平成19年12月,Aと知り合い,Aから食事に誘われ,以後,度々Aと食事をするようになった。被告は,平成20年2月下旬,Aから一泊のゴルフ旅行に誘われ,同旅行において,Aと肉体関係を持ち,Aとの交際を開始した。
(3)Aは,原告と離婚し,被告と婚姻する旨度々表明した。
慰謝料算定のポイント
Aと原告との間の夫婦としての愛情は,遅くとも被告がAと肉体関係を持った平成20年2月頃までには,ある程度薄れていたというべきであり,また,原告は,Aに対し,被告との交際を理由に離婚を求め,又は別居するなどの対応を採っておらず,本件不法行為がAと原告との間の婚姻共同生活を破綻に追い込んだものとまでは認め難い。
さらに,Aと被告との交際は,Aが持ちかけたものであり,被告の立場は受動的なものであったこと,Aは,被告との交際開始後,原告と離婚する旨度々表明し,原告を相手方とする離婚調停を申し立てた上,被告の両親を訪問して被告と婚姻したい旨表明するなどしており,被告がAと婚姻することができるとの期待を持ち,Aとの交際を継続したことは,強い非難に値するものとは必ずしもいい難いこと等の諸事情を総合して勘案すると,原告の精神的苦痛に対する慰謝料は,80万円をもって相当とする。
(※東京地裁平成23年 2月21日判決文より一部引用)
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