一緒に行動しているからといって当然に両者間の不貞行為や親密な交際を推認させるようなものではないとして慰謝料請求を認めなかった事例

事例の紹介

この事例は,不倫の証拠がないことから,不倫慰謝料の請求が認められなかった事例です。また,そもそも親密な関係にあることさえも窺えないとして,慰謝料の請求が一切認められていません。この事例では,そもそも証拠がほとんどないままに訴訟に至っていることが窺え,訴訟前からの見通しの立て方が十分ではなかった可能性もあります。慰謝料についてお悩みの方は,まずは手元の証拠について,弁護士に一度確認してもらうことが大切です。

認められる事実

(1)原告及びAは,平成12年1月1日に婚姻し,子どもはいない。Aは,コーチング・プロデュース業をしている。
被告は,Aの同業者であり,既婚者である。
(2)Aは,平成24年12月11日から17日にかけて,Dの依頼でワークショップのために石垣島に出張し,被告と合流した。
(3)被告は,平成25年2月22日から26日にかけて,Bの依頼で,Aと一緒に熊本に出張し,その後Bと共に観光のために長崎に赴いて,3人で同室に2泊宿泊した。Aが,帰京後原告に問いつめられて3人で同室に宿泊したこと等を話すと,トラブルとなった。Aは,同年4月8日自宅を出て別居するに至った。
(4)被告は,平成25年4月,Dの依頼で,研修会の講師として招かれて,Aと一緒に石垣島に赴いた。
(5)被告は,平成25年5月18日及び19日頃,Aと一緒に宮崎・鹿児島に赴いてワークショップを開催した。

(6)被告は,平成25年7月,仕事仲間の女性とAの三人で日光に赴いて日帰り観光をした。
(7)被告は,平成25年7月18日及び同月19日,Aと一緒に四万十旅行をした。それは,Eの主催で四万十での仕事を検討する中で,Eに誘われて,事前準備として決まった旅行であった。
(8)原告は,Aを相手方として調停を申し立てて同居を求めたが不調となり,審判に移行し,同居を命ずる審判が出された。しかし,Aにはこれに従う意思はない。

慰謝料算定のポイント

事実経過に照らすと,被告とAは仕事を共通にしていて一緒に遠方に行くなど共同で活動する機会が多く,原告が主張するAと被告の遠方に赴いた行動はいずれも仕事上の用事によるものであることが認められ,一緒に行動しているからといって当然に両者間の不貞行為や親密な交際を推認させるようなものではないというべきである。

Aが行っていたコーチングという仕事の性質上,仕事仲間との間で一定程度親しくなることは避けられないこと,原告が依頼した探偵事務所の職員は,四万十においてかなり長時間にわたって被告及びAを観察をしていたと考えられるが,その間被告及びAは手を握るとか肩を抱くといった男女の交際中であれば行うであろう行動を全くしておらず,不倫関係を疑わせるような行動がうかがえないことや原告が無断でチェックしたAが被告とやりとりをしたメールにも不倫関係や親密な関係を示す文言は見られないことに照らすと,かえって被告及びAが親密な関係になかったものと推認される。
そうすると,前記事情をもってしても,被告が原告に対して精神的苦痛を与え損害賠償を要する程度の違法性を有する行為を行ったとはいえない

(※東京地裁平成平成27年 2月26日判決文より一部引用)

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