親権

1 親権とは

親権とは,未成年者を監護教育するとともに,その財産を維持管理するためにその父母に認められた権利及び義務のことです。
法律上は、「財産管理権」と「監護権(身上管理権)」とに分けられています。

子供がいる夫婦が離婚する際には,必ず争点になるものであり,どのように親権者を定めるかについては専門的な知識と経験が必要です。親権について争いがある場合には,まずは一度弁護士に相談されることをお勧めします。

 

1-1 財産管理権

財産管理権とは、子どもの財産を代わりに管理し,または契約などを代理で行う権利のことで,

・包括的な財産の管理権

・子どもの法律行為に対する同意権(民法5条)

を言います。

子ども(未成年者)の契約を親権者は代理人として行うことができ、子どもが単独でした契約を、親権者は取り消すこともできます。
子どもの財産を、どのように子どものために使うかについて、親権者には広い裁量権があります。もっとも、子どもの財産であって親権者の財産ではないので、親権者は子どものために適正にその財産管理をしなくてはなりません。

1-2 監護権(身上監護権)

監護権とは,子どもと一緒に住んで,子どもの身の回りの世話や教育をする権利のことで、以下のようなものが挙げられます。

身分行為の代理権

子どもが身分法上の行為を行うにあたっての親の同意・代理権のこと。例えば結婚や養子縁組など。

居所指定権

親が子どもの住む場所、居場所を指定する権利

懲戒権

子どもに対して親が懲戒・しつけをする権利

職業許可権

子どもが職業(アルバイトも含む)を営むにあたって,親がその職業を許可する権利

 

監護権は親権の一部ですから、親権者がこれを行使します。

しかし、「財産管理は父親がすべきであるが、小さい子どもの世話は母親がする方が良い」といった場合や、「親権者である母親が海外転勤になって子どもの世話ができないので、父親を監護権者とした方が子どもの養育環境にふさわしい」といった場合など、親権と監護権を分離したほうが「子どもの利益になる」と考えられるときは,例外的に、監護権者が親権者と別に定められることもあります。

1-2 親権と監護権

通常は「親権者=監護権者」 とされ,そのほうが子どもの福祉に資すると一般的に考えられています。ですが、離婚の際に,親権者が子どもを監護できない事情がある場合や、親権者でない片方が監護権者として適当である場合には、協議に基づき、親権者とは別に、監護権者を定めることができます。

分離をした場合のメリット

親権をめぐって争っている場合,親権と監護権を分離することで早期に解決できるといった点や,お互いに子育てに関わっている実感が持てるといった点が挙げられます。

離婚後、子どもと一緒に生活をしながら育てるのはどちらか一方の親だけになります。
もちろん、月に数回の面会はありますが、もう一方の親は子どもとの関わりが少なくなっていくものです。

また,子どもとしても,どちらの親とも繋がりを感じることができるため、安心感を与えることが可能となります。

そこで、親権者=父親,監護権者=母親(もちろん逆もあり得ます)と分けておくことで、子どもについて話し合う機会が必然的に増え,子どもと一緒に住んでいない親でも「子育てに関わっている」という実感が持てるというわけです。
子育ての実感が持てれば、養育費もしっかりと払ってくれる可能性があります。

分離をした場合のデメリット

親権(財産管理権)と監護権を分離した際のデメリットは、多くの場面で親権者の同意が必要になることが多いという点です。

2つの権利を分離した場合、実際に子どもと生活し面倒を見るのは監護権者です。
しかし、子どもの通帳を作るとき,携帯電話を契約するとき,子どもの進学や転校、役所や病院の手続きなど、監護者単独では決められず,親権者の許可を得なければなりません。
たとえ「子どもが交通事故にあい,すぐに手術が必要」といった緊急を要する場合でも、親権者の同意が必ず必要になります。

離婚後も良好な関係が続いていれば特に問題はありませんが,相手に連絡しても応じてくれなかったり、一方が遠く離れた場所で暮らしている場合など,手続きが滞る可能性もあります。
離婚後,お互いが常に協力できる環境にいなければ、分けるべきではないでしょう。

2 親権者の適格性について

子供の親権者としてふさわしい者かどうかの判断を,法律上は「親権者の適格性」の問題といいます。

親権者としてふさわしいかどうかというのは非常に難しい判断であり,絶対的な答えのないものであるといえるかもしれません。そこで,離婚調停では,いずれの親を親権者とすることが子供の育成上より望ましいかという相対的な判断について,種々の方策を講じることでより正確な判断ができるように努めています。

両親側の事情

まず,親権者の適格性の判断は,両親側の事情と子供側の事情について実に様々な事情が考慮されます。両親側の事情としては,次のようなものがあります。

① 今後の監護能力
② 今後の精神的経済的家庭環境
③ 子供に対する愛情の程度
④ 従前の監護状況

子ども側の事情

一方,子供側の事情としては,次のようなものが考慮されます。

① 年齢,性別
② 心身の発育状況
③ 現在の環境への適応状況
④ 環境への変化に対する適応可能性
⑤ 子供の意思
⑥ 父母それぞれとの情緒的結びつき

判断の基準

ここに挙げられたような事情を総合的に考慮して,親権者の適格性は判断されます。この判断においては,子供の監護環境を変えないようにしようという監護の継続性の基準や兄弟姉妹は監護者を分けないようにしようとする兄弟姉妹不分離の基準などの一定の指針に基づいて判断されています。

なお,よく見られる誤解としては,親権は原則として母親が持つことになるというものです。確かに,子供の監護を母親が中心となって行っていた場合には,そのような環境を変えるのではなく,環境を継続させようとする考え方はあります。

しかしながら,現代においては,多様な家庭の在り方があり,必ずしも母親が監護の中心となっていないこともあるため,母親であることから親権者として適格であるというような硬直的な判断はできません。あくまでも個別の事情を考慮して,当該子供についてどちらの親が親権者としてふさわしいかを判断しなければ,子供の育成上適格な判断はできないといえます。

2-1 親権者の変更

親権者の変更は子どもの生活に大きな影響を及ぼすため、当事者の協議のみで変更することはできません。しかし、親権者が心身の病気を患うなどで子どもの世話ができなくなったり、親権者が子どもを虐待するなど親権を適切に行使していないなど、やむを得ない場合には、変更が認められることがあります。

いったん決めた親権者等を変更したい場合には、親権者変更の調停・審判や監護権者変更の調停・審判を家庭裁判所に申し立てて、新たな親権者を家庭裁判所で指定してもらうことになります。その際、家庭裁判所では、親権変更を認めるか否かの判断のために、家事審判調査官を派遣し、家庭訪問などで子どもの生活の実態を調査したり,通っている学校にも足を運び,担任から事情を聴くなどして,判断することになります。

3 是非弁護士にご相談ください。

親権者の適格性の判断には,以上のような専門的知識や経験に基づく判断が必要になります。母親であれば,必ず親権者になれるということではないですし,父親であるから,必ず親権者になれないということでもありません。

「絶対に親権者になりたい。」とお考えの方は,まずは一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。当事務所では,離婚のご相談には全て代表弁護士が自らご相談に応じます。当事務所の初回相談は30分無料ですので,まずは初回相談にお越しください。必ずお力になります。

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4 親権についてより詳しく知りたい方へ

親権についてより詳しく知りたいという方は,下記の親権のQ&A集をご覧ください。

親権に関するよくあるご質問をまとめて掲載しております。

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