養育費の取り決めに懈怠約款を設けることは可能ですか?

懈怠約款とは

懈怠約款とは,相手方から支払ってもらう金銭を分割で受け取ることを約束した場合,この支払いを怠ったときのことを予め定めておく条項のことをいいます。

つまり,支払いを怠った場合に,残額を一括して支払う義務を負わせたり,また,義務の履行を怠った程度に応じて遅延損害金を課して支払わせたりなどするために付する条項です。

この取り決めによって,毎月の支払を促し,支払いが滞らないように心理的な圧迫を加えることもできます。

例えば,離婚において,慰謝料等の支払いが高額になる場合や,財産分与において本来取得するはずの金額以上の価値を有する不動産を取得し,その代価として金銭を相手方に支払わなければならないといった場合,相手方に一括で支払う支払能力がない場合には,分割払いで支払ってもらうしかありませんが,その際に,「2回分以上支払いを怠ったときは期限の利益を失い,残金を一括して支払うと定めるとともに,怠った期間に応じて年10%の割合による遅延損害金を付加する」などの約定をすることをいいます。

養育費と懈怠約款

確かに,養育費の場合も慰謝料の場合と同じように考え,け取る養育費の総額を想定し,それを分割で受け取っていると考えれば,当事者の合意があれば怠約款を設けられるとも考えられます

しかし,養育費については,離婚後の事情変更(父母の収入状況や,父母の再婚等の生活状況の変化)に伴って増額,減額される可能性があり,また子供の養育のための費用であるため,基本的にはその時々に発生するものであることから,懈怠約款には性質上なじまない支払い義務であると考えられています。裁判所や公証役場においても,養育費や婚姻費用の取決めに懈怠約款を付けることについては否定的です。

これに対して,不倫等に伴う慰謝料など,額がはっきり定まっている場合には,分割支払や分割払いが遅れた場合の支払いについての約束がしやすいことから,懈怠約款を付けることが可能と考えられます。

養育費の場合は,養育費の取り決めについて公正証書において約束し,強制執行受諾文言を入れておくことで,支払い義務者が支払いを怠った場合に,公正証書に基づいて支払い義務者の給与差押えなどにより不払い分はもちろん,将来の分についても強制執行することが可能です。

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