男性が子を認知してくれない場合,養育費は請求できますか?
認知とは
これについては,まずは「認知」について理解することが大切です。
“妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。”(民法772条1項)と規定されており,これを嫡出推定といいます。しかし,法律上の婚姻関係にない男女の間にできた子どもついて当然には男性が法律上の父親とは言えないことになります。
嫡出でない子の場合は,父親が「認知」することによって初めて,法律上の父親となります。(民法 779条)
認知には,任意認知と強制認知があります。任意認知とは,父親が自発的に認知する場合をいい,父親が認知届を役所に提出してもらいます(民法781条1項)。これに対して,強制認知とは,男性が認知しない場合に,裁判手続きを経ることで認知の効力を生じさせることをいいます。
認知を拒否された場合の養育費の請求
養育費を請求するためには,まず認知によって法律上の父子関係を発生させることが原則です。
まず男性との協議により任意の認知を求め,応じてくれない場合は家庭裁判所に認知調停を申立て(調停認知),調停が成立しない場合は審判手続に移行します。調停・審判での解決ができない場合には,認知の訴えを提起することになります(裁判認知)。ただし,胎児の間は,認知の訴えを提起することができないため,子が生まれてから提起することになります。
このような手続きによって認知がなされ,男性と子の間に父子関係が生じて初めて,男性は子に対して養育費を支払う義務を負います。
調停において,相手の男性が自分の子供ではないと主張する場合は,子供が男性の子供であることを立証しなければならないため,裁判所による事実の調査としてDNA鑑定が行われます。
DNA鑑定の結果,父子関係が証明された場合には,家庭裁判所は相手の男性に対して任意認知をするよう促すことになります。通常は,男性が認知届を提出することで認知手続が完了します。
DNA鑑定を行う業者は基本的に裁判所によって選定され,鑑定費用として10万円程度がかかります。
調停・審判での解決ができない場合には,認知の訴えを提起することになりますが,DNA鑑定により男性が子の生物学上の親であるかどうかがかなりの確度で判明するため,その鑑定結果を覆せない限り判決により認知が認められることになります。
男性が子どもの父親であることを争わず,協議によって養育費の支払いの約束を取り付けた場合でも,認知がなされていなければ,法律上の扶養義務による支払いではないため,支払いが滞った場合に,強制的に養育費の支払いを求めることができません。また養育費請求の調停の申立てもすることができません。
また,公正証書を作成して養育費を取り決める場合においても,法律上の親子関係を明らかにするために戸籍謄本の提出が求められるため,認知がなされていなければ,養育費を定めることはできないことになります。
したがって,男性から養育費を確実に支払ってもらいたいということであれば,先に認知の手続を進める必要があります。
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