妻が2度の中絶手術をしていたことを知ったことによる精神的苦痛や、夫が婚姻関係の破綻により志していたキャリアが閉ざされたことなどを考慮して慰謝料の額を算定した事例

事例の紹介

この事例は,不倫慰謝料としては非常に高額な400万円の支払いを命じた珍しい裁判例です。一般的に,訴訟において,不貞の慰謝料が300万円を超えることは非常に少ないですが,この事例では,夫の不倫により妻が抑うつ状態になるなど,精神的ショックの程度が大きかったことが考慮されています。特に,夫の不倫により妻の宗教的指導者としてのキャリアが閉ざされたということを重要な事情として挙げているといえます。慰謝料額が300万円を超えることは非常に珍しいですが,不倫の慰謝料が個別の事情により判断されていることを示す良い参考例となっています。慰謝料額について疑問のある方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは、ともにE大学に入学し、交際を始め、Aは卒業後就職し、原告は大学院に進学した。

(2)原告とAは、平成22年3月22日、婚姻届出をし、原告とAは、同居するようになった。

(3)原告は、大学や大学院で優秀な成績を修め、宗教的指導者及び教授職に就くことを志し、平成23年4月9日より、留学のため、単身Bで生活するようになった。

(4)平成23年5月6日、被告とAは二人で、温泉旅館に宿泊した

(5)Aは、平成23年8月16日と平成24年4月29日に、人工妊娠中絶手術を受けたが、いずれも手術同意書の「相手」欄には、被告が署名押印している。なお、平成23年7月19日に、妊娠約5週、8月16日には約9週であったと診断されている。

(6)同年11月3日、Aは原告の両親と3人でBを訪れたが、原告は、Aが原告と離婚したがっていると感じ、同月13日、Bから一時帰国した。原告は、自宅マンションに戻り、Aと話し合いをしようとしたが、話し合いは難しく、原告は自宅マンションを出て生活をし、また、Aとの夫婦関係を修復してBでの生活を続けるのが困難であると感じて、Fへの退学手続を取った。

(7)原告は、自宅マンションに、男性が出入りしていることを疑い、自宅マンションに録音機をおいておいたところ、Aと被告が性交渉に及んでいるような様子が録音された。

(8)原告は、原告代理人に依頼して、被告に対して、1000万円を請求した。

慰謝料算定のポイント

被告は、遅くとも平成23年6月頃からAとの間で継続的に不貞行為に及んだことが認められるところ、原告がこれを知って精神的ショックを受け、クリニックを受診し、適応障害(抑うつ状態)・睡眠障害と診断され、その後も継続的に通院しており、原告は、さらに、Aが人工中絶手術を行ったことを知ってさらにショックを受けるなど、被告の行為により原告が相当の精神的苦痛を受けたことが認められる。

また、原告は、宗教的指導者となることを志していたところ、原告とAとの婚姻関係の破綻等により、当初希望していた宗教的指導者としてのキャリアが閉ざされるか、少なくともその選択肢が狭められてしまったことが認められる
以上の事実に、原告とAとの婚姻期間、被告とAとの不貞行為の期間や態様、本件における被告の対応等、本件に顕れた一切の事情を併せ考慮すると、原告の被った精神的・経済的な損害の賠償は400万円とするのが相当である

(※東京地裁平成25年8月22日判決文より一部引用)

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