夫から妻への暴力があったことを考慮して夫から妻の不倫相手に対する慰謝料を算定した事例

事例の紹介

この事例は,不倫の慰謝料としては比較的高額な300万円の支払いを命じた事例です。その理由として,裁判所は,夫が不倫相手との交際にあたって,生後間もない長男が無呼吸発作で集中治療室に救急搬入されていたような状況で,妻に嘘をついて不倫相手と会っていたという事情をあげています。不倫の慰謝料は精神的損害を金銭的に評価するものですが,このような事情があることで妻の精神的損害を深刻なものと評価したといえます。慰謝料の額について疑問のある方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1) 原告と被告Y1は,平成23年8月8日に婚姻した。原告は,平成24年に長男を出産した。長男は,「無呼吸発作」の診断を受け,集中治療室に緊急搬入され,検査のため1週間入院した。
被告Y1は,同年3月23日,被告Y2との交際について認め,被告Y1と原告は,同年5月18日に協議離婚した。
(2) 被告Y1と被告Y2は,遅くとも平成24年2月3日頃から交際を開始し,平成25年5月2日に婚姻した。

慰謝料算定のポイント

被告らの交際が開始したと認める同年2月3日頃の時点において,原告と被告Y1の婚姻関係が破綻していたと認めることはできない。

被告Y2は,不倫関係が開始したと認定できる平成24年2月5日の時点において,被告Y1が原告とは離婚していないことを認識していたと認めることができる。

被告らの不貞行為の期間及び態様,原告と被告Y1の婚姻期間及び婚姻の経過等に加え,被告Y1については,長男が無呼吸発作の診断を受け,一時的とはいえ集中治療室に入院をし,原告も産後体調が優れない状態が続き,その後,長男は異常なしと診断され退院できたものの,その間もないときに,出張で札幌にいると嘘を吐いて,東京で被告Y2と会って   不倫関係を継続し,それらの発覚後に離婚に至ったという経緯があり,有責配偶者として離婚に伴う原告の精神的苦痛を慰謝する義務もあること及び協議離婚の際に被告Y1が70万円ないし80万円を支出したと述べる不動産の名義を原告に移転したことなどを考慮し,被告Y1については300万円(うち200万円は被告Y2と連帯して),被告Y2については,被告Y1と連帯して200万円の支払義務があるというべきである。

(※東京地裁平成26年7月4日判決文より一部引用)

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