不倫及び嫌がらせにより多大な精神的苦痛を被っただけでなく,極めて逼迫した経済状態に置かれるに至ったとして,元妻から元夫の不貞相手に対して350万円の慰謝料請求を認めた事例
事例の紹介
この事例は,不倫相手が妻に対して夫との不倫関係を誇示するような嫌がらせを行うという行動に出たことを考慮し,慰謝料額を350万円とした事例です。この不倫相手による嫌がらせを受け,妻は抑うつ状態にまで至り,精神科医による診療を受けるようになったことも事情として挙げられています。不倫慰謝料の算定においては,このような不倫相手の行動も重要な事情として考慮されるため,慰謝料額についてお悩みの方は,一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
前提事実
1 原告とAは,昭和62年9月29日に婚姻し,その後両者の間に長女が出生した。
2 その後,被告は,Aが原告と婚姻していることを知りながら,Aと交際するようになった。
3 原告とAは,平成17年9月29日に離婚した。
4 被告とAは,平成19年2月3日に婚姻した。
慰謝料算定のポイント
(1) 原告とAは,それまで一応平穏な夫婦関係にあったところ,Aと被告が継続的に不倫関係を有するようになった上,Aが原告と別居して被告と同居するようになったことから,原告とAの婚姻関係は破綻し,離婚するに至ったのであるから,被告の不法行為が原告とAの婚姻関係の破綻の主たる原因であったことには疑いを容れる余地がない。
(2)さらに,被告は,Aとの間で継続的に不倫関係を有するようになってから,事ある毎に,自分とAとの親密な交際ぶりを原告に対して誇示するかのように嫌がらせをするようになり,原告とAの夫婦仲を引き裂こうとしたこと,そのため,原告は抑うつ状態となって頑固な不眠や自殺念慮が生じるようになり,精神科医による診療を受けるようになったが,Aが原告と別居するに至った直後には就労することも困難となって,いまだ中学生であった長女を抱えて生活保護を受給するまでに追い詰められたこと,Aは,原告と離婚した際,長女の養育費として,長女が成人に達するまで毎月8万円を原告に支払う旨約したにもかかわらず,Aが実際に支払った金額は月額3万円にすぎなかったばかりか,Aは,原告が本訴を提起した後,正当な理由もなくその支払を履行していないこと,以上の各事実が認められる。
そして,これらの事情に照らせば,原告は,被告の不法行為により,多大な精神的苦痛を被っただけでなく,極めて逼迫した経済状態に置かれるに至ったことが明らかである。
また,被告は,事ある毎に嫌がらせをして,原告を精神的に追い詰めた被告の言動は,厳しい道義的・倫理的非難を免れないというべきである。
原告が,Aと離婚するに当たり,同人から財産分与として自宅マンションの共有持分2分の1の譲渡を受けたものの,慰謝料については全く支払を受けていないことなどを総合勘案し,350万円をもって相当な慰謝料と認めることとする。
(※東京地裁平成21年5月13日判決文より一部引用)
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