不倫関係の開始時期,不倫期間につき虚偽の事実を夫に告げた行為により夫の精神的苦痛が増大したといえるとして夫から妻の不倫相手に対して320万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,不倫相手が不倫期間について虚偽の事実を夫に告げたことなどを挙げて,不倫の慰謝料額を320万円とした事例です。不倫相手の対応が不倫慰謝料の算定において重要な事情として考慮されていることを示す良い参考事例といえます。また,夫の精神的損害として,妻の不倫が原因となって離婚し,子ども達と同居できなくなったことも指摘していることも参考とすることができます。不倫慰謝料の算定においては,このような個別の事情を考慮することが必要ですので,一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。

前提事実

(1) 原告は,被告補助参加人と平成16年4月8日に婚姻し,2人の子をもうけたが,平成24年7月22日に協議離婚した。

(2)被告は,被告補助参加人と同じアマチュアバンドに所属していた。
(3)本件不倫関係における性交渉は平成24年1月10日から同年6月末ころまでの間に合計20回くらいあった。
(4)同年1月10日に被告との本件不倫関係を結んでから,被告補助参加人は,被告と会うためにときどき家を空けたり,朝帰りしたりするようになった。
(5)同年2月末ころ,原告は,被告補助参加人と口論し,自宅を出て車で生活をするようになった。
(6)同年3月末ころ,被告補助参加人は原告に対し出て行ってくれと告げ,原告は自宅から転居した。

(7)同年4月末ころ,原告が被告補助参加人に対して同居してやり直したいと告げたが,被告補助参加人は,好きな人がいるとして原告の申出を断った。
(8)同年6月下旬ころ,原告は,離婚届に署名して被告補助参加人に渡した。
(9)同年7月14日,原告,被告及び被告補助参加人が集まり話合いをし,被告は土下座をして謝罪した。
その際,被告は,本件不倫関係の開始時期は同年3月末くらいだと述べた。

(10)被告は,原告に対し,同年8月14日送付の回答書で,本件不倫関係の期間は3か月間であると述べた。

慰謝料算定のポイント

本件不倫関係開始時において,原告と被告補助参加人との婚姻関係は破綻していなかった。そして,本件不倫関係開始から同年3月末ころの別居までの期間に,原告と被告補助参加人との間で,別居に至らしめるような決定的な事件等はなかったといえる。

にもかかわらず被告補助参加人が原告に家を出て行くよう告げ,別居に至った原因は,本件不倫関係にあると認めるのが相当である。

被告は,原告らとの話合いの際,本件不倫関係の開始時期は同年3月末くらいだと述べており,客観的事実に反する虚偽を原告に申し向けている。これは被告が被告補助参加人から別居開始時を聞き,これに本件不倫関係の開始時期を合わせたものと考えられる。
また,同年8月14日送付の回答書では,本件不倫関係の期間は3か月であると虚偽の事実を原告に告げている
これらは,被告が自身の責任を矮小化するために事実と異なる虚偽を申し向けたものであるといえ,これにより原告の精神的苦痛が増大したといえる
原告は,約6か月間(性交渉は約20回程度)にわたる本件不倫関係により,婚姻生活の平和が侵害され,約8年間の婚姻生活を終えて離婚に至り,妻(被告補助参加人)を失うと共に,未成年の2人の子と共に家庭生活を営むこともできなくなった。これにより原告の受けた精神的苦痛は大きく,前記の事情も考慮し,慰謝料額を320万円とするのが相当であると解される

(※岐阜地裁平成26年1月20日判決文より一部引用)

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