妻が夫との関係修復を望んでいるにもかかわらず,夫が不倫相手と同居を継続していることを考慮して妻から不倫相手に対して300万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,夫が不倫相手と同居することを止めず,裁判所の命令が出た後になっても,その姿勢を変えないことを考慮し,不倫慰謝料を300万円とした事例です。不倫慰謝料の算定において,このような夫の態度を受けても妻が夫との離婚を望んでいなかったことも考慮されています。一般的に,不倫を理由として離婚に至っていない事例では,慰謝料額が200万円を超えることは珍しいですが,この事例では夫が不倫相手との同居を全く解消しようとしなかったことが増額事由となっています。このような状況でお悩みの方は,まずは一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

前提事実

(1) 原告は,平成9年10月23日に,Aと婚姻し,両名の間には平成10年に長男が,平成12年に長女が出生した。
(2) 被告は,Bとの間に,平成7年に長女をもうけた。被告は,平成25年8月までは,大阪府に在住していたが,平成25年9月頃から東京都のAの通勤用社宅である被告住所地において,Aと同居している。
(3) Aは,平成20年3月に原告の住所地に自宅を購入し,勤務先のa社の東京本社に通勤していたが,平成24年2月に大阪支社に異動になり,大阪市に単身赴任した。
(4) 被告は,平成24年4月,Aの勤務先に派遣社員として採用され,Aと仕事を通じて知り合い,交際を開始し,Aが当時居住していた社宅で同居し始めた。
(5) Aは,平成25年7月限りa社を退職し,同年9月からb株式会社に勤務することになり,社宅に居住し,東京に転居した被告と同居している。
(6) 原告を申立人,Aを相手方とする夫婦同居申立事件において,平成26年1月24日付で,Aに原告住所地において原告との同居を命じる審判が出された。

慰謝料算定のポイント

原告とAの婚姻関係が破綻していることを示す外形的事情や客観的証拠が見当たらない状況下において,妻子の存在を熟知しながら,単身赴任中のAと不倫関係に陥った以上は,たとえAからどのような説明を受けていたとしても,不法行為責任が否定される余地はない。しかも,被告は,原告が婚姻関係の継続を主張しており,Aに対し原告住所地において原告との同居を命じる審判が出されている状況を認識しつつ,Aとの同居を現在も継続しているのであるから,過失の不存在等が認められる余地もない。

本件は,被告において,妻子がいることを知りながらAと同居を継続し,現時点においてもその状況が改まらないという事案であるから,仮に交際の原因がAにあり,Aの懇請等により現在の両者の関係が継続しているとしても,なお被告の責任が軽減されるものとはいい難い。

このような被告とAとの違法な関係の継続により,原告の家庭関係が崩れることになり,原告が精神的損害を被ったことは,明らかというべきである。

現時点における原告の心情としてはなお,Aとの婚姻関係が完全に破綻したとは認識しておらず,離婚を求めるものではないなどの事情を最大限被告に有利に勘案したとしても,本件における諸事情を総合勘案すれば,原告が被った精神的損害を慰謝するためには,300万円をもってするのが相当というべきである。

(※東京地裁平成26年5月19日判決文より一部引用)

離婚相談/性別・年齢・職業別

離婚相談/状況別・お悩み別

不倫慰謝料のご相談