離婚に至っていない事例としては比較的高額な270万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,夫婦が不倫を理由として離婚するには至っていない事例ですが,そのような事例としては比較的高額な270万円の支払いを命じた事例です。一般的に,離婚に至っていない場合は,200万円未満の慰謝料となることが多いです。そのような中で,このような高額な判断となった背景には,不倫の期間が10年と長期であったことや不倫相手が子どもを出産して夫が認知していたことが大きな事情となっています。離婚に至らない事例において,慰謝料額についてお悩みの方はまずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1) 原告は、平成5年4月8日、Aと婚姻し、平成7にB、平成11年にCをもうけた。
(2) Aは歯科医であり、原告は専業主婦である。Aと原告は、婚姻後、自宅兼歯科医院(以下「本件建物」という。)を建て、子らとともに生活しており、Aは歯科医院を営んでいる。
(3) 被告とAは、平成16年ころから肉体関係を持つようになり、平成26年4月ころまで、不倫関係を続けた。被告は、不倫前から、Aに妻子がいることを知っていた。
(4) 被告は、平成17年、Aの子であるDを出産し、Aは、平成22年、Dを認知した。

(5)被告は、Aに対して別れ話を切り出したことが何度かあったが、Aは別れようとせず、離婚して被告と結婚するとの言葉を信じ、不倫関係を続けた。
原告は、Aが外泊などが多く、寂しさを感じていたものの、Aが趣味の夜釣りや歯科医仲間との付き合いで出かけていると信じ、子らのために我慢して、婚姻関係を続けようと考え、Aに外泊等をとがめることもなく、同居を続けていた。
(6)Aは、被告がDを妊娠、出産したころから、被告とDの生活費の援助をするようになった。Aは、平成21年ころから平成26年5月ころまで、被告を歯科医院の事務職として雇った。その間、Aは、Dの養育費等として、月額20万円以上を被告に渡していた。
(7)原告は、平成26年5月、Aに被告との関係を問い詰めた。
原告は、Aが被告と10年以上不倫関係を続け、認知した子までいること、被告及びDに生活費月額20~35万円渡していたことなどを知り、非常に大きなショックを受けた。
(8)Aは、その後、被告に歯科医院を辞めてもらい、養育費の支払をやめ、不倫関係もやめた。
Aは、原告との間で、夫婦としてやり直す方向で話合いを続けたが、原告は平成26年12月離婚調停を申し立てた。
(9)Aと原告は、現在も子らとともに同居を続けている。
(10)被告は、本訴訟において、これまでAの言うことを盲目的に信じて10年間関係を続けてしまったが、原告及び原告の子らに対して、迷惑をかけ、大変申し訳なく思っている旨述べている。

慰謝料算定のポイント

原告とAとの不倫期間が、約10年と長期間に及び週に2回という頻度で関係を続けてきたこと、被告は、Aとの間に子までもうけ原告らと同じ建物内の歯科医院で約5年間稼働し、Aから給料、養育費及び生活費の援助として少なくとも月額20万円以上の金銭交付を受けるなど、深い付き合いをしてきたこと、原告とAとの婚姻期間は20年以上に及び、原告とAとの間に未成年の子2名がいるが、原告は、被告とAとの長期間の不倫関係、Dの出生及び認知、被告らへの生活援助等の事実を知り、強いショックを受けて、離婚調停を申し立てるに至ったことに照らせば、原告は、本件の不貞行為により、多大な精神的苦痛を被ったものと認められる。
他方、被告及びAは、原告に不貞行為が発覚した後、不倫関係を解消し、本訴訟において、原告や子らに対して大変申し訳なく思っている旨述べている。また、Aと原告は、現在、離婚調停中ではあるものの、不貞行為発覚から約4か月経過した時点において、夫婦生活は現在に至るまで継続している旨述べている上、現在まで同居を続け、子らの前では普通の夫婦として振る舞っていることに照らせば、Aと被告との不貞行為によって、婚姻関係が修復不可能な程度に破綻に至ったとは認め難い。加えて、Aと被告の不貞行為は、原告の配偶者であるAの主導により開始され継続していたと認められる
上記諸事情を中心とする本件に表れた全事情を総合考慮すれば、慰謝料額は、270万円と認めるのが相当である。

(※東京地裁平成27年2月27日判決文より一部引用)

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