夫が妻との関係に不満があったことから不倫に至ったとしても,これを理由に妻の帰責性を認めたり不倫相手の責任を軽減するべきではないとして妻から不倫相手に対して200万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,不倫を理由として夫婦が離婚するに至った事例であり,不倫慰謝料として金200万円の支払いを命じた事例です。特徴的な点としては,夫が妻に対して不満があったことから不倫に至ったという事情について,慰謝料の算定において特に妻に不利なように考慮しないと明言した点にあるといえます。不倫により夫婦関係が悪化して離婚するに至ったとしても,不倫以前か夫婦が不仲であった場合,精神的損害の程度が低いようにも思えます。そこで,この事例は,上記のような夫が妻に不満があったという程度では慰謝料算定上の意味がないことを明言したものといえます。不倫をした配偶者からこのような主張をされている方は,まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告と訴外A(以下「訴外A」という。)は平成11年3月29日に婚姻の届出をした夫婦である。
(2)被告は,平成19年11月10日以前から現在に至るまで,訴外Aと不倫関係にある。すなわち,訴外Aは,平成19年11月10日に原告に「僕と離婚してください。」と連絡をした直後から被告と同棲している。

(3)被告は,(2)の当時,訴外Aと原告が婚姻関係にあることを知っていた。

(4)訴外Aは,平成20年4月,原告との離婚を求める調停を家庭裁判所に申し立てた。

(5)原告は,訴外Aとおよそ10年間にわたる結婚生活を続け,平成20年7月25日当時,6歳と1歳3箇月になる二人の子供がいた

慰謝料算定のポイント

インターネットオークションに関する原告の出費や商品管理について,訴外Aに不満があったことが認められ,このほかに原告による家計管理全般について訴外Aに不満があったことが窺われるが,これらの不満に一定程度考慮すべき部分があり得るとしても,こういった事情は,夫婦の間で経済観念に違いがあり,夫が妻に対する不満を抱いていたことを示すにとどまり,これらのことから直ちに婚姻関係が破綻していたことになるわけではない。

被告は,訴外Aに妻がいると認識しつつ,同人から交際を求められて,これに応じただけでなく,ほどなく同棲するようになって,不倫関係を続けてきたものである。
そして,被告が訴外Aとの不倫関係を継続し,同棲を続けていることもあって,原告と訴外Aの婚姻関係はもはや修復不可能な状態になっていると認められるところ,原告が訴外Aと約10年間にわたる結婚生活を営み,平成20年8月の当時で6歳と1歳の二人の子供をもうけていたことに鑑みると,突然に離婚を求められる事態になったことにより原告の受けた精神的苦痛は相当に大きいというべきである。

この点,訴外Aが被告と不倫関係を結ぶに至ったことについては,訴外Aが原告との関係に不満を感じていたことが背景として窺われ,それらの不満には一定程度考慮すべき部分があり得るにしても,このような不満があるからといって,不満を感じる夫が不貞をしてよいわけはなく,本件でも,このことを理由として原告の帰責性を認めたり,被告の責任を軽減すべきものとは解されない

ただし,このような不貞関係の継続について第一に責任を負うべきなのは,原告の配偶者でありながら積極的に被告に働きかけた訴外Aであり,被告の責任は副次的なものというべきであるから,以上の諸事情を勘案し,被告に対する本件訴訟では,慰謝料として200万円を認めるのが相当である。

(※東京地裁平成平成21年 6月22日判決文より一部引用)

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