夫から不倫相手に対する慰謝料請求につき,妻と不倫相手の共同不法行為責任における不倫相手の割合を6割とし240万円の請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,不倫相手の負うべき負担割合を6割としている点に大きな特徴がある事例といえます。一般的に,不倫の一次的な責任は配偶者にあるとされますが,この事例では不倫相手からの積極的な働きかけがあったことが重要な事情となり,不倫相手の方が負担割合が大きくなっています。妻は,不倫相手の意向に支配されていたという主張をしていましたが,裁判所は,そこまでの事実を認定することはできないとしながらも,不倫相手からの働きかけが大きかったことは認めた形となります。このような状況でお悩みの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1) 原告は,昭和49年10月11日,Aとの婚姻を届け出た。原告とAの間には,長女,長男の2人の子がいる。

(2) 被告は,Dとの婚姻を届け出,長男,長女の2人の子がいる。被告妻は,平成16年3月21日に死亡した。

(3) 昭和58年1月,Aは,a生命で保険外務員として勤務を開始した。Aが仕事で使用する車を購入した際,損害保険業を営んでいた被告を紹介され,顔見知りになった。
(4) 昭和61年,被告は,損害保険業を営むかたわら,a生命に入社した。会社行事の宴会後,Aとホテルに向かい,そこで不倫関係を持った。その後は,月に2ないし3回の頻度で2人は不倫関係を持つようになった。
(5) Aは,被告との不倫関係を継続する中で,30歳代後半の時期に被告の子を妊娠し堕胎した。更に,40歳代初めの時期にも再度被告の子を妊娠し,堕胎している。

(6)平成19年秋ころから,原告は,Aと被告の交際を疑うようになっり,原告から問い詰められたAは,被告との不倫関係を,原告に打ち明けた。同日,被告も,原告に対して,Aとの関係を認めた。
(7) 被告は,Aとの不倫関係継続中において,原告の自動車保険の加入,家財保険の加入手続を代行し,長男の自動車保険やその勤務先のスポーツ傷害保険契約を代行するなどした。
(8) 原告とAは同居生活を続けており,離婚はしていない。
(9) 原告は,本件不倫発覚後,医療機関に通院したり,カウンセリングを受ける等している。

慰謝料算定のポイント

本件不貞行為が約22年間もの長きにわたって継続されていたことその間にAは2度妊娠堕胎をしていること原告は保険契約等を通じて被告と面識があったこと,これらの事実が原告に非常に強い衝撃や憤りを与えていること,しかしながら,そうであっても,原告において,いまだ妻であるAに対する愛情を捨て難く,そうした原告の複雑な心情が,原告自身に過度の精神的負担を与えている側面があること等を考慮し,その他本件で現れた一切の事情を斟酌すると,本件不貞行為によって原告の被った精神的苦痛を慰謝するに相当な額としては,400万円を相当とする。

そして,本件不貞行為については,妻であるAがその自由意思において夫である原告を長年にわたり裏切ってきた面が多分にあり,このことを過小評価することはできない

この点について,本件不貞行為の経過の中で,被告がAに対して関係継続を強く要求した事実も存在したが,その要求内容はAに深刻な畏怖心を具体的に抱かせる程度のものとは認められず,かえって,上記要求の後においても,Aが被告との接触を拒絶しようとしたこともなく,2人の自由意思でドライブにも出かける等しているのであって,仮にAの内心においてそれ以前よりも被告との関係に対する想いが冷めてきた面があったとしても,Aが被告の意向に支配されていたとは到底評価できないのであって,一方的に被告が負担割合を負うべきとするような関係にあったとは認められない。

そうすると,本件の共同不法行為における被告の負担割合としては,6割を認めるのが相当である。
よって,被告の負担金額は,240万円が相当である

(※東京地裁平成21年10月30日判決文より一部引用)

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