不倫相手が夫に妻がいることを知りながら,夫との同棲生活を継続し,これによって妻と夫との婚姻関係を破綻させたとして妻の不倫相手への慰謝料請求を200万円の限度で認めた事例

事例の紹介

この事例は,不倫相手が途中までは相手に配偶者がいるとは知らなかったものの,その後にその認識を持つに至りながらも不倫関係を継続した事例であり,その認識を持った以後の不倫関係を理由として200万円の慰謝料を認めた事例です。この事例では,夫婦関係は離婚する以前から相当不仲であったものの,破綻には至っていなかったという点も指摘されています。つまり,相当に不仲な夫婦であっても不倫の慰謝料は免れないものといえます。このような状況でお悩みの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告は,Aと平成8年8月12日婚姻した。

(2)Aと被告とは,平成17年5月初めころ,携帯電話の出会い系サイトを通じて知り合った。Aは,被告に対し,「バツイチ」である旨紹介していたため,被告は,Aが独身であると考え,交際することにした。

(3)同月半ばころ,Aと被告とは不倫関係を持ち,同月31日には二人でディズニーランドに行った。同年6月初めころ,A及び被告が性病に罹患していることが判明した。同じころ,原告も同じ性病に罹患したが,被告は,そのことを同年11月まで知らなかった。

(4)同年6月末ころ,被告はAの電話の会話から原告がフィリピン人であることを知り,外国人と婚姻していたAが性病の保菌者であると考え,Aと別れようとしたが,Aが原告となお婚姻関係にあることは知らなかった。

(5)同年8月ころ,Aが被告に対し,被告方に同居させてもらうよう頼んだ。被告は,Aと同居を開始した後,間もなくAが離婚していないことを知ったが,Aが被告に対し,原告とは離婚調停中であり,離婚については合意が成立しており,その条件について折り合いがついていないだけである旨の説明を聞き,Aとの同居を継続することにした。

慰謝料算定のポイント

被告は,平成17年8月以降,Aに配偶者がいることを知りながら,Aとの同棲生活を継続し,これにより原告とAとの婚姻関係を完全に破綻させたのであるから,原告に対する関係で,不法行為に基づく損害賠償責任を免れないというべきである。

平成17年8月当時,Aにおいて離婚する意思があったことは認められるものの,原告においては,離婚に応ずる意思があったとは認められないし,同年6月まではAは原告と性交渉があり,Aが自宅に帰らなくなったのは,同年8月に被告と同棲生活を開始したことによるのであるから,原告とAとの間の婚姻関係が完全に破綻したのは,Aが平成17年8月に被告との同棲生活を開始したためであるということができる

他方,平成17年8月以前において,Aが原告と婚姻関係にあることを被告が認識していたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,平成17年5月以降,被告が原告と不倫関係を持ったことは,被告に故意があったとは認められず,また,当時,被告においてAを独身であると信じたことについて過失があったということもできないから,平成17年8月以前の被告とAとの間の不倫関係をもって,被告の不法行為が成立するということはできない

また,Aは,平成17年6月末から7月にかけて,何度も原告に対し離婚するよう求めており,被告がAと同棲生活を開始した平成17年8月の時点では,原告とAとの婚姻関係は既に破綻寸前であったと考えられることに照らすと,被告の不法行為と相当因果関係のある原告の精神的損害を慰藉するための慰謝料の額は,200万円を相当と認める。

(※東京地裁平成19年4月24日判決文より一部引用)

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