婚約後に肉体関係を持ったことが認められるが,婚姻前の不貞行為は否定し,婚姻後の不倫関係について夫から妻の不倫相手に250万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,婚姻前から不倫相手との交際があった事例であり,裁判所は婚姻前の慰謝料は認めず,婚姻後の慰謝料のみを認め,その額を250万円としました。婚姻前の慰謝料についても,婚約後であれば,慰謝料が問題となりますが,この事例では,不倫相手が婚約の事実を知らなかったことを理由として慰謝料が認められないという結果になっています。このような状況でお悩みの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは平成17年3月13日に婚約し,同年10月11日に婚姻の届出をした。原告とAは,平成18年には長女Bをもうけた。原告は婚姻当初は京都府内でAと同居していたが,平成19年4月には滋賀県に転居した。
(2)被告は,平成11年ころ大学生時代にAと知り合い,大学院を卒業後,外務省外務事務官に任官し,東京都内に居住していたが,平成20年7月からアメリカ合衆国に留学している。
(3)被告は,平成17年5月Aに2回線の携帯電話を所持させ,その料金の請求先を被告の自宅としていた。
(4)被告は,平成18年1月に,Aの婚姻後の氏名が記載されている年賀状を送った。

(5)Aはホテルに,平成20年2月22日から24日まで2泊分男女各1名の予約をし,メールで親密なやり取りをした。

(6)Aはホテルに,同月29日から1泊分大人2名の予約をしメールで親密なやり取りをした。

慰謝料算定のポイント

被告とAは,相当親密な関係にあったと推認されるけれども,婚約当時,被告がそのことを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,被告が婚約後のAと肉体関係を持った行為は,原告の婚約者としての権利ないし利益を違法に侵害したとはいえないから,不法行為を構成するものではない

これに対し,被告がAに対し平成18年1月に送った年賀状にはAの婚姻後の氏名が記載されていることからみて,被告は,遅くともそのころまでには原告とAが婚姻関係にあることを知っていたものと推認できる。被告はその後もAと頻繁にメールのやりとりをし,Aとホテルに宿泊していた。これらの事実を総合すると,被告とAは長期間にわたり継続的に肉体関係を持っていたものと推認することができる。被告が原告とAとの婚姻後にAと肉体関係を持ったことは,原告の夫としての権利を侵害するものであって,不法行為を構成する。

原告とAは平成17年10月11日の婚姻当初からしばらくはBが産まれるなど円満な家庭生活を営んでいたこと,しかし,その一方で,被告は原告とAとの婚姻直後からAと長期間にわたり継続して不貞行為に及んだこと,Aが被告と会うなどのために月に数回の割合で頻繁に東京へ出かけるようになったことから,次第に原告とAの夫婦関係は円満を欠くようになり,AがBを連れて家を出て,以後原告とAは別居するに至った

これらの事情を総合すると,Aが原告と別居するに至った主な原因が被告とAの不貞行為にあり,そのために原告とAとの婚姻関係が破綻に瀕しているものと推認される。これに,原告はAとの別居によりほとんどBと面会できなくなったこと,原告はBとの面会をしやすくするため転居したが,そのために職場の仕事内容も変わったこと,その他本件に現れた一切の事情を併せ考慮すると,被告の上記不法行為によって原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料は,250万円が相当である。

(※東京地裁平成21年11月25日判決文より一部引用)

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