元夫にも借金問題があったが,元妻が不倫相手と極めて親密な関係になったことが婚姻破綻の決定的原因といえるとして,元夫から元妻と不倫相手に対して150万円の慰謝料請求を認めた事例

事例の紹介

この事例は,妻が不倫したものの,夫にも借金問題や女性問題があった事例であり,裁判所がそのような夫の事情も踏まえて慰謝料額を150万円とした事例です。妻は,夫の借金問題や女性問題を理由として慰謝料の支払いを拒んでいましたが,証拠上,妻の不倫が原因となって婚姻関係が破綻したとされ,慰謝料自体は認められるに至っています。もっとも,慰謝料額は婚姻関係が破綻した事例としては比較的低く,夫の借金問題などが考慮されていることが窺えます。このような状況でお悩みの方は,一度弁護士に対応を相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1) 原告及び被告Y1は,平成6年に交際を始め,平成12年12月31日に婚姻した。被告Y1は,平成16年,Aを出産し,Aは,原告と被告Y1の長男として出生の届出がされたが,後に,真の父が被告Y2であることが判明した。
(2) 被告Y1は,平成18年1月27日,Aとともに家を出て原告と別居し,原告と被告とは,平成19年1月24日にAの親権者を被告Y1と定めて離婚した。
(3) 被告Y2は,平成4年婚姻し,2人の子がある。同被告は,被告Y1のいとこで幼なじみであり,被告Y1が婚姻していることを知りながら,被告Y1と性的関係を持っていた。

慰謝料算定のポイント

原告と被告Y1が別居したこと自体については,被告Y1の借金とその返済問題が主要な直接的契機となっているとも考えられるところ,その借金の使途・原因が必ずしも明らかでなく,被告Y1の借金をどのように返済するかについて夫婦間で解決することができなかったことについて,被告Y1が金員の使途(被告Y2との交際にかなりの出費をしていたことが推認できる。)について真実を率直に言えず,原告を説得することができなかったことが主要な原因であったのではないかと強く疑われること,

さらに,別居に至った背景というよりむしろ婚姻破綻の主要な原因となっていると認められる被告Y1・被告Y2間の関係や原告・B間の関係については,被告Y1は,原告と婚姻した当初から,被告Y2とかなり親しい関係を続けていたものであり,平成14年9月以降はその連絡もかなり頻繁になり,遅くとも平成15年夏ころには肉体関係を持っていたことに比べ,原告とBとの関係は平成15年12月より前に存在したことの証拠がなく,その交際の程度についても被告Y1と被告Y2との間におけるような子の出生という決定的な事実又は客観的な証拠がないことを考慮すると,被告Y1が被告Y2と極めて親密な関係となっていたことが原告との婚姻が破綻するに至った決定的な原因となったものと認めざるを得ず

そして,被告Y1において,Aが被告Y2の子であるかもしれないという可能性を認識しつつ原告の子であると強調し,原告がAを自分の子であると信じていることに乗じるようにして,被告Y2との関係を継続していたという背信的と評されてもやむを得ない態度をも加味すると,原告にも婚姻破綻について相応の責任があることを考慮しても,被告らの不倫及びこれにより婚姻破綻に至ったことを原因とする原告の精神的苦痛は決して小さなものではないというべきである。
以上検討したところと本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告らが原告に対して支払うべき慰謝料は,150万円とするのが相当である。

(※東京地裁平成19年 4月16日判決文より一部引用)

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