不倫をした夫も積極的に不倫に及んだことを減額要素として考慮し,妻から不貞相手に対する慰謝料額を100万円とした事例

事例の紹介

この事例は,妻から不倫相手への慰謝料請求が問題となった事例であり,夫が積極的に不倫に及んだという事情や不倫を理由に離婚するには至っていないことなどが考慮され,慰謝料額が100万円とされた事例です。不倫を理由に離婚に至っていない場合には,慰謝料額が100万円から150万円程になることが多いです。離婚には至っていない場合の慰謝料請求について詳しく知りたい方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは,平成元年4月20日婚姻した夫婦であり,同年に長男を,平成2年に長女をもうけた。

(2)A及び被告は,平成19年秋ころ,携帯電話の出会い系サイトで知り合って電話や電子メールで連絡を取り合うようになり,しばらく後からは実際に会うようになった。
被告は,Aから原告という妻がいることを聞いてこれを知った。

(3) Aは,そのころから,原告に生活費を入れなくなり,休日は自宅を不在がちになった。

(4) Aは,平成21年9月,バイクを購入することを決め,被告にローンの保証人となることを依頼した。
(5) 原告は,同年10月末ころに契約書の連帯保証人欄に被告の氏名が記載されていることを発見した。
(6) 原告及び長女は,被告の自宅を訪問して被告と対面し,原告がAとの関係を問い質したのに対し,被告は,Aとの間に男女関係があったことについては明確に否定しなかった。
(7) 原告は,Aが被告と不貞行為に及んだと考え,Aに対して離婚を求めるような態度をしたことがあったが,現在はAとの夫婦関係を改善していくこととし,婚姻関係を維持している。
(8) Aは,原告に対し,被告との間で約2年間にわたり親交を深め,男女の関係があったことを認めている。

慰謝料算定のポイント

被告は,原告という配偶者がいることを知りながらAとの不貞行為に及んだものと認められ,かかる被告の行為は,原告に対する不法行為を構成するものと認めるのが相当というべきである。
被告は,自ら携帯電話の出会い系サイトを利用し,そこで出会ったAに配偶者がいることを知りながら安易に不貞行為に及んだものと認められ,これにより原告が相当程度の精神的苦痛を被ったことは明らかである。

他方で,Aも同サイトを利用して積極的に不貞行為に及んだもので,被告が原告とAの夫婦関係を故意に害することを意図していたというものではないし,不貞行為の詳細はこれを認定するに足りる証拠がなく,悪質であるとの事実を認定することはできない。

また,原告も,Aが被告と知り合ったころから生活費を入れなかったり自宅を不在がちになったにもかかわらず,Aと話合いを行って関係を改善することなくこれを放任するなど,必ずしもAとの関係が円満であったとはいい難い面があったことを否定できないといえる。

そこで,以上の諸事情,その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,原告が本件不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するのに相当な慰謝料額は,100万円と認めるのが相当である。

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