夫と不倫相手の間に子が生まれ,夫が同子を認知した状況で慰謝料額が150万円とされた事例

事例の紹介

この事例は,妻から不倫相手への慰謝料請求が問題となった事例であり,不倫を理由に離婚するには至っていないことが考慮され,慰謝料額が150万円とされた事例です。不倫を理由に離婚に至っていない場合には,慰謝料額が100万円から150万円程になることが多いです。この事例では,夫と不倫相手の間に子供が生まれたことなどが考慮され,離婚には至っていない事例としては比較的高額な慰謝料額とされています。離婚には至っていない場合の慰謝料請求について詳しく知りたい方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは,平成18年4月24日に婚姻し,長女B(平成20年生)及び長男C(平成22年生)をもうけた。Aはその当時a病院に勤務していた医師である。

(2)被告は,原告がB及びCをa病院で出産した際,同病院に助産師として勤務していた。

(3)被告は,原告がB,C出産の際に担当者の一人として,原告の身の回りの世話等を行ったため,顔を合わせた時には世間話をするなどした。

(4)平成22年3月,被告は原告に対し,Aから知り合いの医師を紹介してもらうため,自分のメールアドレスを記載したメモを渡し,同年4月初旬,Aらと被告らとの間で食事会が開かれた。その際,Aと被告とは,不倫関係を持った。

(5)それ以降,被告は平成24年3月まで約2年間,Aとの間で不倫関係を継続し,その間,2度にわたってAの子を妊娠し,1度目は中絶したが,2度目は,平成24年にAの子であるDを出産した。

(6)Dは,同年3月9日,Aから胎児認知を受けている。Dは大脳の形成異常があり,被告は,Aとの間の調停により,Dが20歳になるまで,月額5万8000円の養育費を支払うとの合意に達している。

慰謝料算定のポイント

被告の行為は,Aとともに原告に対する共同不法行為となり,その共同不法行為の中で,被告の果たした役割は小さいとはいえない。そして,原告が,その不法行為のため精神的な打撃を受け,幼い子ら(B及びC)のために離婚まではできないものの,夫が不倫相手の子を認知したことによりその旨が戸籍に記載されて養育費の負担や相続権も認められ,その影響は将来にわたって存続し続けることなども相まって,Aとの婚姻関係に大きな影響を受けていることが認められる。

しかし,他方で,Aと原告の婚姻関係は破綻しているとまではいえず,原告は未だにAに責任があるとは認めてはいないこと,Aとの間では両者間の子らに関する会話が継続していることからすると,修復の可能性が十分あると認められる

これらの事情のほか,被告は,病気を抱えたDを一人で育てなければならないこと,被告はAに対する慰謝料等(中絶,妊娠,出産の費用や,暴行の治療費,結婚の約束が果たされなかったことに対する慰謝料)の請求訴訟を予定し,Aに対し求償訴訟を行うことが予想されることなどの諸般の事情も考慮すると,本件訴訟における慰謝料額としては150万円と認めるのが相当である。

(※東京地裁平成25年4月11日判決文より一部引用)

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