妻から夫の不倫相手に対する慰謝料請求につき,婚姻期間や不貞期間がそれほど長くないこと等を考慮して慰謝料額を70万円と算定した事例

認められる事実

(1) 原告は,平成15年5月ころ,Aと知り合い,交際を初め,同棲を開始した。
(2) 被告は,平成19年5月ころ,Aの勤務する会社において,パートタイム従業員として稼働するようになり,Aと知り合った。
(3) 原告は,平成19年8月8日ころ,Aと婚姻した。
(4) 被告は,平成20年2月中旬ころ,Aと性交渉を伴う交際を開始した。
(5) 被告は,遅くとも平成20年3月中旬ころ,Aから,婚姻している旨を明示的に知らされたが,その後もAとの交際を継続した。
(6) 原告は,興信所にAの行動調査を依頼し,興信所の調査により,平成20年4月4日に被告がAとホテルに入ったことなどが判明した。
(7) 被告は,レストランにおいて原告と話合いを行い,その際,妻がいることを知りながらAと不貞に及んで家庭を破壊して,原告に精神的苦痛を被らせたことを謝罪し,慰謝料として160万円を支払う旨の書面を作成した。
(8) 原告とAは,平成20年5月ころ,別居した。
(9) 原告は,家事調停を経て,Aを被告として,離婚等を求める訴えを東京家庭裁判所に提起した。

慰謝料算定のポイント

被告がAとの交際を開始した時点で,原告とAとの婚姻関係が破綻していたと認めるに足りる証拠がないこと,また,被告が,Aとの交際に消極的であったとか,交際を止めようとしていたとまで認めるに足りる証拠はないこと,さらに,原告は,平成20年4月16日ころから,不安障害との診断により,メンタルクリニックに定期的に通院して薬物療法等の治療を受けるようになったことや,原告とAとは離婚こそ成立していないものの,婚姻関係自体は破綻に至っていることなどを認めることができる。

一方で,原告とAは,同棲期間(約4年)がそれなりにあったものの,婚姻期間自体はそれほど長くはないこと原告とAとの婚姻関係が完全に円満であったとまではいえないこと,被告は,当初はAに配偶者がいることを知らずに交際を開始しており,その交際期間も合わせて2か月程度に過ぎなかったことなどからすると,被告の不法行為自体が原告に被らせた精神的苦痛の程度や原告とAとの婚姻関係破綻に影響した程度等に鑑みて,原告の精神的苦痛を慰謝するために被告が原告に対して支払うべき慰謝料としては,70万円を認めるのが相当である。

(※東京地裁平成22年 2月 1日判決文より一部引用)

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