婚姻関係が破綻する前から不倫関係を持ったと認められる証拠がないとして夫から不倫相手への慰謝料請求が認められなかった事例

事例の紹介

この事例は,婚姻関係が破綻した以後の不倫であるとして,慰謝料請求が認められなかった事例です。夫婦が離婚することに明確に合意した後に不倫の問題が生じたことから,このような結論になったといえます。離婚協議中の不倫が問題となることもよくありますが,離婚協議がなされ始めた以降であれば不倫とはならないということではないので注意が必要です。離婚協議中の不倫などについてお悩みの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

認められる事実

(1)原告とAは,平成21年2月14日に婚姻し同居していた。被告は,原告と6年以上の付き合いになる友人であるが,原告を通じてAと知り合い,原告とAが婚姻していることを知っていた。
(2)Aは,平成22年8月頃から,実家に戻ったまま自宅にあまり帰らなくなり,同年12月26日にはマンションを賃借した。
原告は,平成23年1月20日,Aに対し,わざわざAの旧性を用いて「A1さんへ」と記載し,原告とAとの関係が夫婦と呼べるものではなかったこと,家族,親族及び友人らには取り繕ってきたものの,そのような態度を続けることに疲れたこと,このまま形だけの夫婦を続けるのはお互いに良いことではないので離婚したいこと,話し合うまでもないことと思われるのでメールにしたことなどを記載したメールを送信した。
(3) 平成23年4月6日,原告とAの離婚の届出がされた。
(4) Aは,被告の子を妊娠し,平成23年に長男Bを出産したところ,被告は,平成24年3月,Bを認知した。

慰謝料算定のポイント

原告においても,平成23年1月20日メールを送った時点において,離婚することを決意してこれを伝えたことが認められ,このあと離婚届が作成されてその届出がされたことを考慮すれば,原告とAの婚姻関係は遅くとも同日には破綻したと認めるのが相当である。

Aは,平成22年12月26日から被告と同棲している旨をその申立書に記載しており,同日にはマンションを賃借しているところ,Aが借りた部屋の広さ,家賃等が,Aの月収からすると,一人で居住するにはやや不釣り合いな印象があることは否めない。
しかし,平成23年3月及び4月頃における被告とAとの間のメールによれば,その頃には未だ被告とAは同棲していない様子が窺えること,Aが,上記の点について,Aが弁護士に法律相談を行った際,弁護士から,相手の男性と親密だということを強調した方が良く,マンションを賃借したときから同棲していることにした方が有利になるという趣旨の説明を受け,子供の出生届を出すことしか考えていなかったので,そのとおりにしたにすぎない,上記マンションを借りるに当たっては母親からの援助も受けているなどと供述しているところ,このような供述内容を一概に否定する証拠もないことからすれば,上記のような事情をもって被告とAが平成22年12月26日から同棲するようになったと認めることはできない

そうすると,原告とAの婚姻関係が破綻する前から被告がAと性的関係を持ったと認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,原告の請求は,理由がないから,これを棄却することする。

(※東京地裁平成27年 8月26日判決文より一部引用)

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