不倫関係にあったことが認められず,離婚は妻と夫の協議の結果であるとして慰謝料請求を認めなかった事例

事例の紹介

この事例は,婚姻期間中に妻が他の男性と交際関係になった事例ですが,その交際関係が肉体関係に至っていることの証拠がなかったため,不倫を理由とする慰謝料の請求が認められなかった事例です。大人同士が交際関係にあったことの証拠があるのであれば,不貞の立証もできているのではないかと感じられる方も多いのではないかと思いますが,裁判では,より厳密な立証が求められることを示す良い参考例といえます。この事例からしても,不倫の証拠が十分であるかはしっかりと弁護士に確認してもらうことが必要であるといえるでしょう。

認められる事実

(1)原告とAは,平成14年5月に婚姻し,同年に長女を,平成17年に長男をもうけた。
(2)原告,A及び被告は,子供の頃知り合い,親交のあった者同士である。

(3)被告とAは,平成20年頃から二人きりで食事をしたり,日常的にメールのやり取りをするようになった。
原告は,Aと被告が親密な関係にあるように見えたことから,平成22年12月5日,Aの携帯電話のメールの履歴を確認すると,Aと被告が頻繁にやり取りをしていることを知った。
(4)原告は,同月29日,被告を呼び出し,Aとの関係を問い質した。被告は,原告に対し,Aとは結婚を前提に付き合っていると述べたほか,Aとは二人で暮らしたいと思っているなどと話した。
原告は,被告との話合いの後,Aに被告との関係を問い質したところ,Aは,原告と離婚して被告と結婚したいなどと述べた。
(5)被告は,平成23年4月から1年程度沼津市に住んでいたが,Aと会ったり,Aと大阪に出掛けて行ったりしたこともあった。
(6)原告は,子供たちのこともあり,Aと関係を修復したいと考えていたが,Aは原告とは離婚したいと述べ,関係修復に至らなかった。
原告とAは,平成24年7月頃別居し,平成25年4月28日協議離婚した。

慰謝料算定のポイント

被告とAは,遅くとも平成22年12月頃から結婚を前提に交際していたと認めることができる
しかしながら,前記認定事実を総合的に評価しても,被告とAとの間に肉体関係があったと認めるには足りず,本件証拠上,被告とAが不倫関係にあったと認めることまではできない
そうすると,前記のとおりの被告とAが結婚を前提に交際していたことや原告とAの離婚に至った経緯等に鑑みれば,被告とAの交際が原告とAの婚姻共同生活に影響を与えたことは認められるものの,離婚自体は,原告とAの協議の結果であり,被告がAと肉体関係を持って原告とAの婚姻共同生活を破壊したとまでは認められない
以上によれば,原告の請求は認められないことから棄却する

(※東京地裁平成26年11月19日判決文より一部引用)

離婚相談/性別・年齢・職業別

離婚相談/状況別・お悩み別

不倫慰謝料のご相談