不倫関係を持ったことが認められるとしても慰謝料請求権が時効により消滅したとして元妻から元夫の不倫相手に対する慰謝料請求が認められなかった事例
事例の紹介
この事例は,時効との関係で慰謝料を請求した夫が妻の不倫を認識した時期が問題となった事例です。結論的には,夫が主張する不倫を認識した時期と妻の主張する夫が不倫を認識した時期にはズレが生じ,裁判所は妻の主張を認め,時効が成立していることを理由として,不倫を理由とする慰謝料の請求を認めませんでした。不倫の慰謝料を請求する場合には,必ず時効の成立時期を意識して対応することが必要であることを示す良い参考例であるといえます。不倫を認識してからしばらく期間が経過しているときには,必ず弁護士に一度相談されることが必要といえます。
認められる事実
(1) 原告は,平成13年に,A夫と婚姻した。
(2) 被告とA夫は,平成23年1月19日,自家用車内で会った。原告は,同車内における被告及びA夫の写真を撮影し,A夫を問い詰めた。これに対し,A夫は,原告に対し,謝罪をしたものの,被告との交際を否定し,被告と今回初めて会ったと主張した。また,被告も,原告に対し,A夫との交際を否定した。
(3) 原告は,平成23年5月23日,A夫と調停離婚をした。
(4) 原告は,平成26年12月11日,本件訴えを提起した。
慰謝料算定のポイント
原告は,平成23年1月19日,被告とA夫との行動を見てその様子を写真を撮影し,また,被告の氏名及び住所を知ったことが認められる。原告は,不貞行為があったと判断したと主張しているところ,仮にこの事実が認められるとすると,原告は,同日において,不貞行為の行われた状況を認識していたと推認することができる。
そして,原告が不貞行為の行われた上記状況を認識していたのであれば,不貞行為が不法行為であることを知り,それによって,原告はそれによる精神的な損害も知ったといえる。
したがって,仮に原告主張の不貞行為の行われた上記状況があると認められるとすると,原告が本件不貞行為について損害及び加害者を知ったのは,平成23年1月19日であると認めることができる。
以上によれば,仮に本件不貞行為があると認められるとしても,これによる損害賠償請求権は時効により消滅したといえるので,原告の被告に対する請求は理由がない。
(※東京地裁平成27年 3月17日判決文より一部引用)
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