不貞行為をした側からの離婚請求はできますか?
1 回答
離婚訴訟において,不貞行為をした側(法律的には,「有責配偶者」といいます)からの離婚請求については制限されることがあります。日本では,過去には有責配偶者からの離婚請求自体を認めていない時代もありました。現在では,一定の要件を満たす場合には,離婚を認めることになっていますが,やはりその要件も厳格になっています。
不貞をした上で離婚請求をご検討の方については,上記のような一定の要件を満たすかについて専門的な判断を要するところですので,まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めします。以下では,不貞行為をした側からの離婚請求について簡単にまとめます。
2 有責配偶者からの離婚請求が認められる要件
昭和62年の最高裁判決によって,従来の考え方とは異なり,有責配偶者からの離婚請求を一定の要件のもとに認めるという考え方が示されました。これは,婚姻関係が破綻しているのであれば,無理に婚姻関係を継続させるべきではないという破綻主義の考えに基づくものといえます。この最高裁判決によって示された要件は次のとおりです。
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
②夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的社会的経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
有責配偶者からの離婚請求においては,裁判所がこれらの要件を満たすかを厳格に判断することになります。以下では,それぞれの要件について詳説します。
まず,①については,まず別居があることが大前提とされた上で,別居期間が長期間に及んでいるといえるかを検討することになります。
この点,長期間といえるかについては,裁判上は別居期間が10年以上に及んでいる場合には長期間と評価されることが多いです。
一方,10年に満たない場合については,まずは,同居期間と別居期間の対比が問題とされます。例えば,同居期間が1,2年程であるのに対して,別居期間が7,8年程になるような場合には,別居期間は長期間であると評価されることが多いようですが,同居期間が20年程あるのに対して,別居期間が7,8年程の場合には長期間と評価すべきかには疑問が生じます。そのような場合には,その他の事情,例えば,別居に至る経緯や別居後の事情を考慮して,別居期間が長期間といえるかを検討することになります。この点についての判断に迷われる方は一度弁護士に相談されることをお勧めします。
次に,②については,まず,未成熟の子とは,経済的,社会的に自立して生活することができない状態の子供のことをいいます。一般的には,未成年の子と同義に理解されることが多いですが,身体的な障害などを有する場合には,未成年の子ではない場合においても未成熟の子と評価されることがあります。
この②の要件は,有責配偶者の離婚の希望よりも未成熟の子の養育上の配慮を重視する要件であるといえます。したがって,有責性の程度や子供の監護状況などに照らして,信義に反しないといえるような場合には,未成年の子がいる場合でも離婚請求が認められることがあります。裁判例上は,高校生以上であり,遠くない将来に就職が予定されているような場合には,離婚請求が認められる傾向にあるといえます。
次に,③については,①と②の要件を満たす場合には,③が想定するような苛酷な状態になることは考え難く,③についても満たすことがほとんどです。したがって,③の要件は,念のため例外的な事情がないかを確認するための要件であるといえます。そもそも経済的な状況については,財産分与や慰謝料によって解決されるのが本来的であり,精神的な状況についても長期間の別居がある場合には苛酷とまでは言い難くなっていることが多いことからも,裁判例上もこの要件を理由として離婚請求が認められないことは稀であるといえます。
3 再婚を希望している場合
有責配偶者からの離婚請求は,相手が婚姻費用の支払の継続を希望する限り,なかなか話し合いでの解決は難しいところがあります。もっとも,再婚を希望している場合などには,交渉次第では離婚の合意を得られることもあります。まずは,弁護士にご相談の上,今後の対応について検討されることをお勧めします。
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